2008年02月15日
バイク乗りの話
Aはどっちかというとリーダー的存在だった。みんなを引っ張っていくというより飄々とした感じの性格で、自然とまわりに人が集まるような感じの奴だった。
そんなAのバイク仲間の一人に、Bという男がいた。
Bはちょっとマイペースな性格で、ツーリングでも時々自分勝手な走りをしてAやみんなを困らせるような人だったらしい。
しかしどっちかというと気の弱い方で、根は悪い奴ではないので、仲間としてそれなりに付き合っていたという。
A曰く、
「クラスに一人くらいはいるじゃん、悪気はないけど自分で気付いてないっていうか、天然っていうか…それほど仲いいってわけでもないけど悪いってわけでもない、そんな友人の一人」
だそうだ。
ある日、いつものように仲間とツーリングして、その帰りのこと。すっかり日は暮れていた。
途中で自由解散となって、Aは帰りの方向が同じBと一緒に走っていた。
しばらくすると、前を走ってたBがいきなりウインカーをだして、一軒のファミレスに入っていった。
Aは(…またか、しかたねーなー)と思いつつ、Bについていった。
Bは、トイレから出てくると、
「ごめん、なんか喉乾かねえ?」
と笑いながら席に座った。
Aは(お前トイレいってんじゃん)と苦笑しつつ、店員を呼んだ。
えらく無表情な店員がやってきて、
「いらっしゃいませ」
と、テーブルの上の、オススメが描いてある紙の立て札を見せつける。それにはパッションフルーツドリンクが描いてあった。
Aはめんどくさかったので、
「ああ、じゃあこれ一つ」
と言うと、Bも
「あ、じゃあおれもそれ」
と続ける。
「パッションフルーツドリンクお二つですね」
と店員は冷ややかに答える。
Aは、なぜかやけに眠気を覚えていた。
Bは、そんなAにお構いなしに、たわいもないことを話しかけていた。
いつもはそれほどおしゃべりな方ではないそのBの態度が少し怪訝に思えてきた。
いつの間にか、目の前には、真っ赤なパッションフルーツドリンクが来ていた。
少しうとうとしながら、Bの話に適当に相槌をうってると、
「おいA!ちゃんと聞いてるのか?」
Bの思いがけない口調にAは驚いた。
「き、聞いてるよ」
いつもの気の弱そうな彼とはうって変わった厳しい口調で続ける。
「Aはいつもそうだ。おれのいうこと全然聞いちゃいない。おれのことなめてるだろ?」
「そ、そんなことねえよ…」
なぜか眠気はやまない。
「嘘付け!お前らいつもおれの陰口を言ってるんだろう?!」
Bはどんっ!とテーブルを叩いた。その反動でドリンクがぶちまけてしまう。
ジュースが服にかかって真っ赤に染まる。が、冷たくない。むしろぬるいくらい。
Aはジュースを拭こうとするも、あまりにもの眠気で体が思うように動かない。
見ると、Bの服も真っ赤に染まってしまっている。
Aは、必死に眠気に抗いながら答える。
「陰口なんか言ってねえよ!仲間じゃねえか!」
事実、Aは性格上そういう陰口とか大嫌いだった。
「ほんとか?仲間なんだな?」
「あたり前だ!今日も一緒に走っただろ?」
「じゃあ、帰りも一緒に走ってくれるんだな?」
その時Aはなぜか、(やばい!)と思った。
次の瞬間、Aの携帯が鳴った。
さっき別れた別の仲間からだった。
眠気の中、必死に携帯に出ようとする。
「…走ってくれるんだろ?」
Bは、目をかっと見開き、、すさまじい形相でAを見据えながら聞く。
「お前もこいつ(携帯の相手)も仲間だ!」
Aは思わず叫ぶ。やっとの思いで携帯の通話ボタンを押す。
携帯からは、何故か、両親が自分の名前を呼んでいる声が聞こえた…
…Aは、病室で目覚めた。
ツーリングの帰り、AとBのバイクが接触し、転倒したらしい。
下りの坂道で、二人からまって道路から落ちるような形だったそうだ。
二人とも生死の境をさまよう程の大怪我を負い、Aは奇跡的に生還し、Bは、Aが目覚める前に息をひきとったという…
そんなAのバイク仲間の一人に、Bという男がいた。
Bはちょっとマイペースな性格で、ツーリングでも時々自分勝手な走りをしてAやみんなを困らせるような人だったらしい。
しかしどっちかというと気の弱い方で、根は悪い奴ではないので、仲間としてそれなりに付き合っていたという。
A曰く、
「クラスに一人くらいはいるじゃん、悪気はないけど自分で気付いてないっていうか、天然っていうか…それほど仲いいってわけでもないけど悪いってわけでもない、そんな友人の一人」
だそうだ。
ある日、いつものように仲間とツーリングして、その帰りのこと。すっかり日は暮れていた。
途中で自由解散となって、Aは帰りの方向が同じBと一緒に走っていた。
しばらくすると、前を走ってたBがいきなりウインカーをだして、一軒のファミレスに入っていった。
Aは(…またか、しかたねーなー)と思いつつ、Bについていった。
Bは、トイレから出てくると、
「ごめん、なんか喉乾かねえ?」
と笑いながら席に座った。
Aは(お前トイレいってんじゃん)と苦笑しつつ、店員を呼んだ。
えらく無表情な店員がやってきて、
「いらっしゃいませ」
と、テーブルの上の、オススメが描いてある紙の立て札を見せつける。それにはパッションフルーツドリンクが描いてあった。
Aはめんどくさかったので、
「ああ、じゃあこれ一つ」
と言うと、Bも
「あ、じゃあおれもそれ」
と続ける。
「パッションフルーツドリンクお二つですね」
と店員は冷ややかに答える。
Aは、なぜかやけに眠気を覚えていた。
Bは、そんなAにお構いなしに、たわいもないことを話しかけていた。
いつもはそれほどおしゃべりな方ではないそのBの態度が少し怪訝に思えてきた。
いつの間にか、目の前には、真っ赤なパッションフルーツドリンクが来ていた。
少しうとうとしながら、Bの話に適当に相槌をうってると、
「おいA!ちゃんと聞いてるのか?」
Bの思いがけない口調にAは驚いた。
「き、聞いてるよ」
いつもの気の弱そうな彼とはうって変わった厳しい口調で続ける。
「Aはいつもそうだ。おれのいうこと全然聞いちゃいない。おれのことなめてるだろ?」
「そ、そんなことねえよ…」
なぜか眠気はやまない。
「嘘付け!お前らいつもおれの陰口を言ってるんだろう?!」
Bはどんっ!とテーブルを叩いた。その反動でドリンクがぶちまけてしまう。
ジュースが服にかかって真っ赤に染まる。が、冷たくない。むしろぬるいくらい。
Aはジュースを拭こうとするも、あまりにもの眠気で体が思うように動かない。
見ると、Bの服も真っ赤に染まってしまっている。
Aは、必死に眠気に抗いながら答える。
「陰口なんか言ってねえよ!仲間じゃねえか!」
事実、Aは性格上そういう陰口とか大嫌いだった。
「ほんとか?仲間なんだな?」
「あたり前だ!今日も一緒に走っただろ?」
「じゃあ、帰りも一緒に走ってくれるんだな?」
その時Aはなぜか、(やばい!)と思った。
次の瞬間、Aの携帯が鳴った。
さっき別れた別の仲間からだった。
眠気の中、必死に携帯に出ようとする。
「…走ってくれるんだろ?」
Bは、目をかっと見開き、、すさまじい形相でAを見据えながら聞く。
「お前もこいつ(携帯の相手)も仲間だ!」
Aは思わず叫ぶ。やっとの思いで携帯の通話ボタンを押す。
携帯からは、何故か、両親が自分の名前を呼んでいる声が聞こえた…
…Aは、病室で目覚めた。
ツーリングの帰り、AとBのバイクが接触し、転倒したらしい。
下りの坂道で、二人からまって道路から落ちるような形だったそうだ。
二人とも生死の境をさまよう程の大怪我を負い、Aは奇跡的に生還し、Bは、Aが目覚める前に息をひきとったという…
2008年02月14日
橋渡り
「誰にも喋ったこと無いんですけどね」
Oさんはそう言うと、ゆっくり話だした。
小学校の頃、Oさんが学校に遅刻したことがあったという。
その理由は結局Oさんは先生にもご両親にも話さなかったのだという。
子供心に
何か変だ
と思っていたからだ。変だと気付いてしまったOさんは、怖くて先生も両親にも話せなかったのだ。
ランドセルを背負ったOさんは、普段通りに家を出て学校へ向かった。周りには同じ学校に行く生徒が何人もいるはずの時間にも関わらず、その日に限って、誰もいない。
「周りに知ってる子供がいないんですよ。そしたら、今日はお休みかな?って思うじゃないですか」
不安になりながら通学路を歩いていると、
「こっちだよ」
と声がしたという。
そちらを見ると、自分と同じくらいの少年がいて、おいでおいでをしている。
記憶にない子供だったが、今まで誰もいない道を歩いて来たOさんはちょっと安堵した。
「え、なに?」
「こっちにみんな集まってるんだよ、知らないの?」
「知らないよ?」
「なんだぁ、早くおいでよ」
そういうと、通学路の道から路地に入っていく。普段から寄り道などはしないOさんは、不安になりながら、少年の後をついて行った。
角をいくつか曲がると、普段見たことのないどぶ川に出た。
道はそこで終わっていた。
どぶ川は大人が両手を広げたくらいの幅で、おおよそ1メートルおきに、コンクリで出来た橋のようなものが渡されていた。少年はそのコンクリに乗り、
「ここから行くんだよ」
と言うと、次のコンクリに飛び移った。
「できないよぅ」
Oさんがぐずっていると、
「大丈夫。ほらっ」
少年が何度も2本のコンクリの間を往復して手本を見せる。
Oさんはそれを見て、最初のコンクリに立ち、次のコンクリに飛び移った。
「できたできた」
少年はOさんに向かって言うと、次のコンクリに飛び移った。
Oさんはそれについていく。
いくつコンクリを渡っただろうか。Oさんは凄く不安になった。
「どこにみんないるの?」
「もうすぐだよ」
「もう学校はじまっちゃう」
「もうすぐ着くよ」
少年が、とんとんとんと連続して飛んだ。
あっ待って
そして、Oさんは次のコンクリを踏み外した。
踏み外したとたん、
もうだめだっ
と思ったという。しかし衝撃があったが水の感触が無い。
目を開けると余り見覚えの無い場所だった。
え?
見回してみると、それは学校の裏にある貯水池だった。
普段から先生や両親に、近寄ってはいけないと普段から言われていた貯水池のすぐ横で、Oさんは転んでいたのだ。
Oさんは泣きながら学校へ駆け込んだ。もう学校は始まっていた。
遅刻だった。
先生は目を丸くして驚いたが、遅刻の理由を何度尋ねられても、Oさんは言わなかった。
「あの時、踏み外さなかったら、私はここにいなかったんでしょうね」
Oさんにとって一番怖かったのは、踏み外した瞬間に、少年がものすごい形相で怒っていたことだという。・・・
Oさんはそう言うと、ゆっくり話だした。
小学校の頃、Oさんが学校に遅刻したことがあったという。
その理由は結局Oさんは先生にもご両親にも話さなかったのだという。
子供心に
何か変だ
と思っていたからだ。変だと気付いてしまったOさんは、怖くて先生も両親にも話せなかったのだ。
ランドセルを背負ったOさんは、普段通りに家を出て学校へ向かった。周りには同じ学校に行く生徒が何人もいるはずの時間にも関わらず、その日に限って、誰もいない。
「周りに知ってる子供がいないんですよ。そしたら、今日はお休みかな?って思うじゃないですか」
不安になりながら通学路を歩いていると、
「こっちだよ」
と声がしたという。
そちらを見ると、自分と同じくらいの少年がいて、おいでおいでをしている。
記憶にない子供だったが、今まで誰もいない道を歩いて来たOさんはちょっと安堵した。
「え、なに?」
「こっちにみんな集まってるんだよ、知らないの?」
「知らないよ?」
「なんだぁ、早くおいでよ」
そういうと、通学路の道から路地に入っていく。普段から寄り道などはしないOさんは、不安になりながら、少年の後をついて行った。
角をいくつか曲がると、普段見たことのないどぶ川に出た。
道はそこで終わっていた。
どぶ川は大人が両手を広げたくらいの幅で、おおよそ1メートルおきに、コンクリで出来た橋のようなものが渡されていた。少年はそのコンクリに乗り、
「ここから行くんだよ」
と言うと、次のコンクリに飛び移った。
「できないよぅ」
Oさんがぐずっていると、
「大丈夫。ほらっ」
少年が何度も2本のコンクリの間を往復して手本を見せる。
Oさんはそれを見て、最初のコンクリに立ち、次のコンクリに飛び移った。
「できたできた」
少年はOさんに向かって言うと、次のコンクリに飛び移った。
Oさんはそれについていく。
いくつコンクリを渡っただろうか。Oさんは凄く不安になった。
「どこにみんないるの?」
「もうすぐだよ」
「もう学校はじまっちゃう」
「もうすぐ着くよ」
少年が、とんとんとんと連続して飛んだ。
あっ待って
そして、Oさんは次のコンクリを踏み外した。
踏み外したとたん、
もうだめだっ
と思ったという。しかし衝撃があったが水の感触が無い。
目を開けると余り見覚えの無い場所だった。
え?
見回してみると、それは学校の裏にある貯水池だった。
普段から先生や両親に、近寄ってはいけないと普段から言われていた貯水池のすぐ横で、Oさんは転んでいたのだ。
Oさんは泣きながら学校へ駆け込んだ。もう学校は始まっていた。
遅刻だった。
先生は目を丸くして驚いたが、遅刻の理由を何度尋ねられても、Oさんは言わなかった。
「あの時、踏み外さなかったら、私はここにいなかったんでしょうね」
Oさんにとって一番怖かったのは、踏み外した瞬間に、少年がものすごい形相で怒っていたことだという。・・・
2008年02月13日
ネックレス
加藤さんが子供のころ、公園で遊んでいるとジーンズ姿の男が近づいてきた。
見たことのない男だった。
「キミ、これちょっと着けてくれる」
脂っけのない長い髪をした男はビーズのついたネックレスを加藤さんに見せた。
「子供だからね。キラキラしてるときれいだなって思ったよ」
加藤さんが恥ずかしがっていると横にいた友達が男に
「私がする」
と言ったのだが、男は首を振り、加藤さんがしないならあげないと言った。
「これは特別にオニーサンが作ったんだよ。オニーサンは宝石屋なんだ」
ネックレスには細い線がついていた。
「これなあに」
「電気でピカピカ光るからね。今、スイッチ入れてくる。すごくキレイに光るよ」
「やっぱり、私がしたいな」
「だめ…この首がいいから…」
たしか、男がそう言ったことを加藤さんは今でも憶えていた。
<この首がいい>…と。
男は加藤さんがネックレスを着けると<ピカピカ光るスイッチ>を入れに行った。
「そのままにしといてね。壊れやすいから」
男は念を押すように繰り返した。
「したいなぁ…」
友達が呟いた。
加藤さんは不意に外そうと思い、ネックレスを頭から<脱ぐ>ようにして外した。
そしてそばにあった枝の根元にかけた。
「あたし、していい?」
友達が立ち上がり、手に触れた瞬間。
車が急発進する凄まじい音と共にビンビンと空気が鳴った。
枝が激しく揺れると地面に落ち、公園の外までひきずられて止まった。
気がつくとネックレスをかけていた枝が根元からスッパリと落とされたように丸い切り口を見せていた。
ふたりともワッと声を上げると家に逃げ帰ったという。
結局、男は捕まらなかった。
見たことのない男だった。
「キミ、これちょっと着けてくれる」
脂っけのない長い髪をした男はビーズのついたネックレスを加藤さんに見せた。
「子供だからね。キラキラしてるときれいだなって思ったよ」
加藤さんが恥ずかしがっていると横にいた友達が男に
「私がする」
と言ったのだが、男は首を振り、加藤さんがしないならあげないと言った。
「これは特別にオニーサンが作ったんだよ。オニーサンは宝石屋なんだ」
ネックレスには細い線がついていた。
「これなあに」
「電気でピカピカ光るからね。今、スイッチ入れてくる。すごくキレイに光るよ」
「やっぱり、私がしたいな」
「だめ…この首がいいから…」
たしか、男がそう言ったことを加藤さんは今でも憶えていた。
<この首がいい>…と。
男は加藤さんがネックレスを着けると<ピカピカ光るスイッチ>を入れに行った。
「そのままにしといてね。壊れやすいから」
男は念を押すように繰り返した。
「したいなぁ…」
友達が呟いた。
加藤さんは不意に外そうと思い、ネックレスを頭から<脱ぐ>ようにして外した。
そしてそばにあった枝の根元にかけた。
「あたし、していい?」
友達が立ち上がり、手に触れた瞬間。
車が急発進する凄まじい音と共にビンビンと空気が鳴った。
枝が激しく揺れると地面に落ち、公園の外までひきずられて止まった。
気がつくとネックレスをかけていた枝が根元からスッパリと落とされたように丸い切り口を見せていた。
ふたりともワッと声を上げると家に逃げ帰ったという。
結局、男は捕まらなかった。
2008年02月12日
縁の下
タクシー運転手の奥さんが、まだ五才になったばかりの子を
残して亡くなった。
父親は仕事ででかけている時間が長く、そのあいだ隣の家に子どもを
預けていたのだけれど、深夜になっても帰ってこないのものだから、
親切で面倒をみていた隣人もさすがにしびれを切らして、子どもを
ひとりの家に帰してしまうことも多かった。
子どもは寂しくて、父親が帰ってくるまで、親の名を呼んで
泣いていたそうだ。
ある晩、子どもの泣き声がぴたっと止まり、笑い声が聞こえてきた。
隣人は、「ああ父親が帰ってきたのだな」と納得したのだけど、
そのしばらくあとに父親の帰宅する音が聞こえてきて、
「父ちゃんおかえり」と子どもが出迎えている。
そうした夜が何晩かつづいて、不審になった隣人はある晩、子どもの
様子をみにいった。
子どもは、暗い部屋でひとりで喋っては笑っている。
その様子が、だれかと話しているもののようなので、翌日、父親に
そのことを話した。
父親は、子どもに毎晩だれと話しているのか、とたずねた。
「母ちゃんだよ。おいらが寂しくて泣いてると、母ちゃんがきて、
だっこしたり、頬ずりしたりしてくれるの」
「それで母ちゃんはどっから入ってくるんだ?」
子どもは、土間の縁側を指さした。
「あの下から、にこにこしながら這ってでてくるよ」
それから父親は仕事をかえて、早く帰宅するようになったそうだ。
残して亡くなった。
父親は仕事ででかけている時間が長く、そのあいだ隣の家に子どもを
預けていたのだけれど、深夜になっても帰ってこないのものだから、
親切で面倒をみていた隣人もさすがにしびれを切らして、子どもを
ひとりの家に帰してしまうことも多かった。
子どもは寂しくて、父親が帰ってくるまで、親の名を呼んで
泣いていたそうだ。
ある晩、子どもの泣き声がぴたっと止まり、笑い声が聞こえてきた。
隣人は、「ああ父親が帰ってきたのだな」と納得したのだけど、
そのしばらくあとに父親の帰宅する音が聞こえてきて、
「父ちゃんおかえり」と子どもが出迎えている。
そうした夜が何晩かつづいて、不審になった隣人はある晩、子どもの
様子をみにいった。
子どもは、暗い部屋でひとりで喋っては笑っている。
その様子が、だれかと話しているもののようなので、翌日、父親に
そのことを話した。
父親は、子どもに毎晩だれと話しているのか、とたずねた。
「母ちゃんだよ。おいらが寂しくて泣いてると、母ちゃんがきて、
だっこしたり、頬ずりしたりしてくれるの」
「それで母ちゃんはどっから入ってくるんだ?」
子どもは、土間の縁側を指さした。
「あの下から、にこにこしながら這ってでてくるよ」
それから父親は仕事をかえて、早く帰宅するようになったそうだ。
2008年02月11日
累ヶ淵
あるところに食い詰めた浪人がいた。いよいよ銭に困って高利貸しの坊さんに金を借りる。
しかし期限がきても浪人には返すあてが無い。
そのうち坊さんが取り立てにやってきた。
「金利だけでも返せ」
「もう少し待ってくれ」
のやりとりの末、
「それではこれを代わりに頂きましょう」
と床の間にあった刀を持ち出そうとする坊主。
「おのれ坊主!武士の魂に手を掛けたな!」
と浪人は一刀のもとに坊さんを切り捨てた。
「…元はと言えば、返さぬあなたが悪いのに…」
坊さんは恨めしそうに浪人を睨みつけながら絶命。
その後、浪人は旗本に仕えることになり、嫁をもらい子どもをもうけた。子を
「累(かさね)」
と名づけ幸せな日を過ごしていた。
三年が過ぎた。近所の寄り合いに出た帰り道、とっぷりと夜が更けた夜道を、累を背負って家路を急ぐ武士は妙な事に気が付いた。
背中が重い、息子は大きくはなったがこんなに重くはない。
足を進めるたびに重さを増してゆく背中が気になって武士は肩越しに振り返った。
「こ ん な 夜 で ご ざ い ま し た な あ」
おぶっていたのは何時ぞや切り捨てた坊主だった。
「うわわっ!」
と坊主を振り落とし
「ばけものめ!」
腰の刀を抜き斬り付けた。
「うぎゃあ」
悲鳴に我に返った武士が落ち着いてよく見ると、そこには頭を断ち割られた累の屍骸が転がっていたのだった。
しかし期限がきても浪人には返すあてが無い。
そのうち坊さんが取り立てにやってきた。
「金利だけでも返せ」
「もう少し待ってくれ」
のやりとりの末、
「それではこれを代わりに頂きましょう」
と床の間にあった刀を持ち出そうとする坊主。
「おのれ坊主!武士の魂に手を掛けたな!」
と浪人は一刀のもとに坊さんを切り捨てた。
「…元はと言えば、返さぬあなたが悪いのに…」
坊さんは恨めしそうに浪人を睨みつけながら絶命。
その後、浪人は旗本に仕えることになり、嫁をもらい子どもをもうけた。子を
「累(かさね)」
と名づけ幸せな日を過ごしていた。
三年が過ぎた。近所の寄り合いに出た帰り道、とっぷりと夜が更けた夜道を、累を背負って家路を急ぐ武士は妙な事に気が付いた。
背中が重い、息子は大きくはなったがこんなに重くはない。
足を進めるたびに重さを増してゆく背中が気になって武士は肩越しに振り返った。
「こ ん な 夜 で ご ざ い ま し た な あ」
おぶっていたのは何時ぞや切り捨てた坊主だった。
「うわわっ!」
と坊主を振り落とし
「ばけものめ!」
腰の刀を抜き斬り付けた。
「うぎゃあ」
悲鳴に我に返った武士が落ち着いてよく見ると、そこには頭を断ち割られた累の屍骸が転がっていたのだった。
2008年02月10日
拉致
(Aさん)の友達(Bさん)が実際に体験した話らしい。
ある夜、Bさんが家に帰ろうと暗い道を歩いてたら、急に車で誘拐されて、何処だかわからないところにまで連れていかれて、何年も働かされた。
ある時親切な人と会い、ココは四国の山奥だという話を聞かされた。
その親切な人の協力もあって、海を死ぬ気で横断し、岡山まで逃げることが出来た。
家に帰ってから知ったのだが、Bさんの友達のAさんが借金のため働いて臓器を売れと言われたのだが、そんなことできるはずもなく、
代わりに友達を連れていてくれ
と言ったため連れていかれたらしい。
あのままあそこにいたら臓器まで売られていたことになる。
それを聞いて以来Bさんは外に外出できなくなったとか。
ある夜、Bさんが家に帰ろうと暗い道を歩いてたら、急に車で誘拐されて、何処だかわからないところにまで連れていかれて、何年も働かされた。
ある時親切な人と会い、ココは四国の山奥だという話を聞かされた。
その親切な人の協力もあって、海を死ぬ気で横断し、岡山まで逃げることが出来た。
家に帰ってから知ったのだが、Bさんの友達のAさんが借金のため働いて臓器を売れと言われたのだが、そんなことできるはずもなく、
代わりに友達を連れていてくれ
と言ったため連れていかれたらしい。
あのままあそこにいたら臓器まで売られていたことになる。
それを聞いて以来Bさんは外に外出できなくなったとか。
2008年02月09日
霊界へのバス
ある男が夜遅くバスでいえに戻ろうとした、が、駅についたときはもはや深夜中なので彼もまだバスがくるかどうかが知らない。けど家は遠いのでとてもじゃないが歩ける距離ではなかった…彼は意を決してそこでずっと待っていた。
もうこないかと諦めかけたとき突然バスが現れた、彼はうれしくてそそくさに乗りました。
が、ふと違和感を感じてしまった。こんな夜中に何故か混んでいた、座れる席は一つしかなかった。それと人が大勢いるのに、誰も口を閉ざし、バス内は静まり返っていた。
不審だと思いつつ彼は唯一空いてた席に座り、隣に一人の女性がいた。彼女は声を押さえ彼の耳元にこう囁いた
「あなたこのバスに乗るべきではないよ」
彼は黙って続きを聞くことにした。彼女は続いた
「このバスは霊界に行くものよ、あなたのような生きてる人がどうしてここにいるの?このバスに居る人は誰も霊界にいきたくないよ、あなたはすぐ彼らに捕まって誰かの替わりとして死んでしまうわよ」
彼は怖さのあまりで言葉もでなかった、身を震えながらどうすればいいかでさえわからず途方に暮れてる時、彼女は
「大丈夫、私が助けてあげる」
と言い出した。
そして突然!彼女は窓を開けて彼を連れて飛び降りた。バスの乗客が
「ああ!!逃げられちまった」
と大声で叫んだ。
彼が落ち着いたとき、彼女と二人で荒れた丘に立っていた。彼は急いで
「助けてくれてありがとう」
と伝えた…が…
彼女の口元が歪み、筋肉が痙攣しながらわらいました。そして咄嗟にこう言った
「これであの人たちと奪い合わなくてもいいわね」
もうこないかと諦めかけたとき突然バスが現れた、彼はうれしくてそそくさに乗りました。
が、ふと違和感を感じてしまった。こんな夜中に何故か混んでいた、座れる席は一つしかなかった。それと人が大勢いるのに、誰も口を閉ざし、バス内は静まり返っていた。
不審だと思いつつ彼は唯一空いてた席に座り、隣に一人の女性がいた。彼女は声を押さえ彼の耳元にこう囁いた
「あなたこのバスに乗るべきではないよ」
彼は黙って続きを聞くことにした。彼女は続いた
「このバスは霊界に行くものよ、あなたのような生きてる人がどうしてここにいるの?このバスに居る人は誰も霊界にいきたくないよ、あなたはすぐ彼らに捕まって誰かの替わりとして死んでしまうわよ」
彼は怖さのあまりで言葉もでなかった、身を震えながらどうすればいいかでさえわからず途方に暮れてる時、彼女は
「大丈夫、私が助けてあげる」
と言い出した。
そして突然!彼女は窓を開けて彼を連れて飛び降りた。バスの乗客が
「ああ!!逃げられちまった」
と大声で叫んだ。
彼が落ち着いたとき、彼女と二人で荒れた丘に立っていた。彼は急いで
「助けてくれてありがとう」
と伝えた…が…
彼女の口元が歪み、筋肉が痙攣しながらわらいました。そして咄嗟にこう言った
「これであの人たちと奪い合わなくてもいいわね」