2008年02月13日
ネックレス
加藤さんが子供のころ、公園で遊んでいるとジーンズ姿の男が近づいてきた。
見たことのない男だった。
「キミ、これちょっと着けてくれる」
脂っけのない長い髪をした男はビーズのついたネックレスを加藤さんに見せた。
「子供だからね。キラキラしてるときれいだなって思ったよ」
加藤さんが恥ずかしがっていると横にいた友達が男に
「私がする」
と言ったのだが、男は首を振り、加藤さんがしないならあげないと言った。
「これは特別にオニーサンが作ったんだよ。オニーサンは宝石屋なんだ」
ネックレスには細い線がついていた。
「これなあに」
「電気でピカピカ光るからね。今、スイッチ入れてくる。すごくキレイに光るよ」
「やっぱり、私がしたいな」
「だめ…この首がいいから…」
たしか、男がそう言ったことを加藤さんは今でも憶えていた。
<この首がいい>…と。
男は加藤さんがネックレスを着けると<ピカピカ光るスイッチ>を入れに行った。
「そのままにしといてね。壊れやすいから」
男は念を押すように繰り返した。
「したいなぁ…」
友達が呟いた。
加藤さんは不意に外そうと思い、ネックレスを頭から<脱ぐ>ようにして外した。
そしてそばにあった枝の根元にかけた。
「あたし、していい?」
友達が立ち上がり、手に触れた瞬間。
車が急発進する凄まじい音と共にビンビンと空気が鳴った。
枝が激しく揺れると地面に落ち、公園の外までひきずられて止まった。
気がつくとネックレスをかけていた枝が根元からスッパリと落とされたように丸い切り口を見せていた。
ふたりともワッと声を上げると家に逃げ帰ったという。
結局、男は捕まらなかった。
見たことのない男だった。
「キミ、これちょっと着けてくれる」
脂っけのない長い髪をした男はビーズのついたネックレスを加藤さんに見せた。
「子供だからね。キラキラしてるときれいだなって思ったよ」
加藤さんが恥ずかしがっていると横にいた友達が男に
「私がする」
と言ったのだが、男は首を振り、加藤さんがしないならあげないと言った。
「これは特別にオニーサンが作ったんだよ。オニーサンは宝石屋なんだ」
ネックレスには細い線がついていた。
「これなあに」
「電気でピカピカ光るからね。今、スイッチ入れてくる。すごくキレイに光るよ」
「やっぱり、私がしたいな」
「だめ…この首がいいから…」
たしか、男がそう言ったことを加藤さんは今でも憶えていた。
<この首がいい>…と。
男は加藤さんがネックレスを着けると<ピカピカ光るスイッチ>を入れに行った。
「そのままにしといてね。壊れやすいから」
男は念を押すように繰り返した。
「したいなぁ…」
友達が呟いた。
加藤さんは不意に外そうと思い、ネックレスを頭から<脱ぐ>ようにして外した。
そしてそばにあった枝の根元にかけた。
「あたし、していい?」
友達が立ち上がり、手に触れた瞬間。
車が急発進する凄まじい音と共にビンビンと空気が鳴った。
枝が激しく揺れると地面に落ち、公園の外までひきずられて止まった。
気がつくとネックレスをかけていた枝が根元からスッパリと落とされたように丸い切り口を見せていた。
ふたりともワッと声を上げると家に逃げ帰ったという。
結局、男は捕まらなかった。