2008年12月16日
彼女を作らない理由
Hには昔彼女がいたが、白血病になった。
Hは頻繁にお見舞いに行ったり美味しいもの買ってきたりして、彼女を慰めた。
彼女も喜んでいたが悲しい事に、亡くなってしまった。
しばらく抜け殻のようにHはなっていたが、49日あたりの時、彼女が現れた。
1人で酒飲んでて、トイレから戻ってきたら生前の姿でベッドに腰掛けていたという。
Hは涙をボロボロ流して、会いにきてくれたか~そうかぁ~的な事を叫んだ。
彼女もニッコリと笑いながら、何かつぶやいていた。
Hが泣きながらベッドの彼女の横に座ると、彼女は本当に天使の様にニッコリ笑いながら
「死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ」
と呪文の様につぶやいているのが聞こえたという。
笑顔だけに心底ゾッとしたと言う。
百年の恋も冷め、翌日すぐに懇意のお寺に行った。「これはいけませんなぁ」と住職。
お払いしてもらったら出なくなったという。
「別に浮気してたわけでもなし…もう誰も信じられなくなったなぁ」
Hはそれ以来、女遊びはするが、彼女を作る事はしなくなったという。
Hは頻繁にお見舞いに行ったり美味しいもの買ってきたりして、彼女を慰めた。
彼女も喜んでいたが悲しい事に、亡くなってしまった。
しばらく抜け殻のようにHはなっていたが、49日あたりの時、彼女が現れた。
1人で酒飲んでて、トイレから戻ってきたら生前の姿でベッドに腰掛けていたという。
Hは涙をボロボロ流して、会いにきてくれたか~そうかぁ~的な事を叫んだ。
彼女もニッコリと笑いながら、何かつぶやいていた。
Hが泣きながらベッドの彼女の横に座ると、彼女は本当に天使の様にニッコリ笑いながら
「死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ」
と呪文の様につぶやいているのが聞こえたという。
笑顔だけに心底ゾッとしたと言う。
百年の恋も冷め、翌日すぐに懇意のお寺に行った。「これはいけませんなぁ」と住職。
お払いしてもらったら出なくなったという。
「別に浮気してたわけでもなし…もう誰も信じられなくなったなぁ」
Hはそれ以来、女遊びはするが、彼女を作る事はしなくなったという。
2008年12月12日
中古車
ある中古車のイベントに来たカップルがディーラーにいきなりこう言った。
「すみません、あそこにあるランサー。事故車ですよね」 確かにその通りだったが、ディーラーは慌てながら聞いた「すみません、大きな声では言えませんが、なんで知ってるんですか?」
「たまたま、似た色の車が前に事故っていたのを、見ていたもので、もしかしてと思いました。けど、事故車とはいえこんなに安いのなら俺欲しいな。」すると彼女も「なんか良いね、これにしない?」ディーラーはここぞとばかりに購入を勧めた。そして売買が成立した。書類を書いてもらい、月曜日に取りにくる事になった。
だが当日カップルは来なかった。
次の日書類の番号に電話をすると、男の母親がでた。「家の息子なら、半年も前に事故で亡くなりましたよ。」まさかと思い続けて聞いた「もしかして黄色のランサーで、女性も一緒でしたか?」すると「はい、その通りです・・・」後に知った事だが、納車日の8月14日が2人の命日だった。
「すみません、あそこにあるランサー。事故車ですよね」 確かにその通りだったが、ディーラーは慌てながら聞いた「すみません、大きな声では言えませんが、なんで知ってるんですか?」
「たまたま、似た色の車が前に事故っていたのを、見ていたもので、もしかしてと思いました。けど、事故車とはいえこんなに安いのなら俺欲しいな。」すると彼女も「なんか良いね、これにしない?」ディーラーはここぞとばかりに購入を勧めた。そして売買が成立した。書類を書いてもらい、月曜日に取りにくる事になった。
だが当日カップルは来なかった。
次の日書類の番号に電話をすると、男の母親がでた。「家の息子なら、半年も前に事故で亡くなりましたよ。」まさかと思い続けて聞いた「もしかして黄色のランサーで、女性も一緒でしたか?」すると「はい、その通りです・・・」後に知った事だが、納車日の8月14日が2人の命日だった。
2008年12月09日
双子?
ある日の深夜、タクシーが人通りの少ない道で女に呼び止められた。
女は美人ではあるがどこか影のありそうな感じで、なぜかはわからないが人をゾッとさせるような独特の雰囲気がある。
時間も時間であるし、まさか幽霊じゃないだろうな……などと疑う運転手に向かい、女は小声で行き先を告げるとそのまま黙り込んでしまった。
やがてタクシーは数十分ほど走り続け、女に言われた場所までたどり着いた。
女は料金を支払うとタクシーから降り、そのまま夜の闇の中に歩き去っていく。
どうやら生身の人間であったらしい。
安心した運転手はホッと息をつき、そのまま今来た道を戻っていった。
ところが、しばらく走り続けて先ほど女を拾った場所に差し掛かったとき、運転手は信じられないものを目にし思わず声を上げてしまった。
人気のないその道の片隅に、先ほど送り届けたはずの女が立ち、さっきと同じように手を上げてタクシーを呼び止めようとしていたのである。
女は美人ではあるがどこか影のありそうな感じで、なぜかはわからないが人をゾッとさせるような独特の雰囲気がある。
時間も時間であるし、まさか幽霊じゃないだろうな……などと疑う運転手に向かい、女は小声で行き先を告げるとそのまま黙り込んでしまった。
やがてタクシーは数十分ほど走り続け、女に言われた場所までたどり着いた。
女は料金を支払うとタクシーから降り、そのまま夜の闇の中に歩き去っていく。
どうやら生身の人間であったらしい。
安心した運転手はホッと息をつき、そのまま今来た道を戻っていった。
ところが、しばらく走り続けて先ほど女を拾った場所に差し掛かったとき、運転手は信じられないものを目にし思わず声を上げてしまった。
人気のないその道の片隅に、先ほど送り届けたはずの女が立ち、さっきと同じように手を上げてタクシーを呼び止めようとしていたのである。
2008年12月04日
タクシー
タクシー運転手Aさんは、とある雨の夜に夜勤で車を走らせていた。
「こんな日は出るって噂なんだよな」
ここ数日は何故か客を拾えず、噂のせいもあって鬱々とした
気持ちでいたAさんの目に、道ばたで手を挙げる女性の姿が移った。
「おっ、客だ」
さっそく車を停め、その女性を乗せたAさん。
行き先を聞いて走らせるうちに、女性が噂に語られる幽霊の特徴と
酷似していることに気が付いてしまった
「まさか・・・」
Aさんは平静を装いながら、内心はかなり怯えてしまった。
気になり出すと、どうしても女性が幽霊に思えてしかたがない。
「どうして俺がこんな目に・・・ 成績も落ちてるってのに・・・」
車も放り捨てて逃げ出したい気持ちに駆られた。
そこでAさんはハッと気が付いた。自宅のすぐ近くに来ている!
「お客さん、私ちょっと家に忘れ物してきちゃいまして、
すぐそこですので取りに行っていいですか?」
「・・・はい、どうぞ」
か細い声で女性は答えた。
後部座席で、女性は内心ほくそ笑んでいた。
(幽霊のふりするだけで、こんな簡単にただ乗りできるなんてね)
タクシー幽霊の噂が立ち始めたころに手口を思いつき、
以来ずっと常習犯だったのだ。
やがて車は大通りを外れて住宅街に入っていき、ある家の前で停まった。
「ここです。すぐ戻ってきますから、ちょっと待ってて下さい」
Aさんは家族の待つ家に戻りながら、安堵と幸福感で満たされた。
(ああ、やっと帰ってこられた・・・)
女性は大人しく待っていた。
しかし5分経ち、10分が過ぎてもAさんは戻ってこない。
「変ねえ、見つからないのかしら」
あまりに遅いので、とうとう幽霊のふりをするのもやめにして
呼びに行ってみることにした。
ピンポーン
チャイムを鳴らすと、Aさんの妻と思しき年格好の女性が出てきた。
心なしか元気がなく落ち込んだ様子だった。
「どちら様でしょう・・・?」
「あの、私今までご主人のタクシーに乗っていた者ですが」
女性がかいつまんで事情を話すと、妻の顔色が見る見る変わっていった。
「そ、それは何かの間違いです・・・ 主人は3日前に亡くなったんですから」
妻はそれだけ言うと泣き崩れた。
女性は驚いて後ずさった。その目に家の表札が映った。
書いてあったAさんの名前、その名前に女性は覚えがあった。
数日前ニュースや新聞で騒がれた、タクシー強盗殺人の被害者だった・・・
「こんな日は出るって噂なんだよな」
ここ数日は何故か客を拾えず、噂のせいもあって鬱々とした
気持ちでいたAさんの目に、道ばたで手を挙げる女性の姿が移った。
「おっ、客だ」
さっそく車を停め、その女性を乗せたAさん。
行き先を聞いて走らせるうちに、女性が噂に語られる幽霊の特徴と
酷似していることに気が付いてしまった
「まさか・・・」
Aさんは平静を装いながら、内心はかなり怯えてしまった。
気になり出すと、どうしても女性が幽霊に思えてしかたがない。
「どうして俺がこんな目に・・・ 成績も落ちてるってのに・・・」
車も放り捨てて逃げ出したい気持ちに駆られた。
そこでAさんはハッと気が付いた。自宅のすぐ近くに来ている!
「お客さん、私ちょっと家に忘れ物してきちゃいまして、
すぐそこですので取りに行っていいですか?」
「・・・はい、どうぞ」
か細い声で女性は答えた。
後部座席で、女性は内心ほくそ笑んでいた。
(幽霊のふりするだけで、こんな簡単にただ乗りできるなんてね)
タクシー幽霊の噂が立ち始めたころに手口を思いつき、
以来ずっと常習犯だったのだ。
やがて車は大通りを外れて住宅街に入っていき、ある家の前で停まった。
「ここです。すぐ戻ってきますから、ちょっと待ってて下さい」
Aさんは家族の待つ家に戻りながら、安堵と幸福感で満たされた。
(ああ、やっと帰ってこられた・・・)
女性は大人しく待っていた。
しかし5分経ち、10分が過ぎてもAさんは戻ってこない。
「変ねえ、見つからないのかしら」
あまりに遅いので、とうとう幽霊のふりをするのもやめにして
呼びに行ってみることにした。
ピンポーン
チャイムを鳴らすと、Aさんの妻と思しき年格好の女性が出てきた。
心なしか元気がなく落ち込んだ様子だった。
「どちら様でしょう・・・?」
「あの、私今までご主人のタクシーに乗っていた者ですが」
女性がかいつまんで事情を話すと、妻の顔色が見る見る変わっていった。
「そ、それは何かの間違いです・・・ 主人は3日前に亡くなったんですから」
妻はそれだけ言うと泣き崩れた。
女性は驚いて後ずさった。その目に家の表札が映った。
書いてあったAさんの名前、その名前に女性は覚えがあった。
数日前ニュースや新聞で騒がれた、タクシー強盗殺人の被害者だった・・・
2008年12月01日
トンネルで
ある日の深夜、若い女性が家への帰り道を歩いていた。彼女の家は、“出る”という噂のトンネルを抜けた先にある。
しかし、これまでに彼女はそこで何もおかしなものを見たことはなかったので、トンネルのことは特に気にしないでいた。
ところが、いざトンネルに差し掛かってみると、この日は様子がおかしい。
何かのトラブルがあったのか、トンネル内の電灯が全て消えていたのである。
こんな時間に、明かり一つ見えないトンネルを抜けるというのは、なんとも心細いものだ。彼女がトンネルの入り口で躊躇していると、後ろから「どうしました?」と誰かが声をかけてきた。
振り返ると、そこには若い警官が立っている。彼女が事情を説明すると、警官はそれならば自分が手を引いて案内するので、一緒に向こう側まで行きましょうと申し出てきた。
警官の持つ懐中電灯の細い明かりに照らされたトンネルの中は、いつもとは異なりかなり不気味な表情を見せている。彼女は何か変なものを見てしまうことを恐れて目をつぶると、警官に手を引かれるまま暗闇の中を歩いていった。
「つきましたよ」
やがてそんな声が聞こえ、彼女は恐る恐る目を開いた。
彼女の立つ少し先には、確かにトンネルの向かい側が見える。ところが、彼女の前を歩いていたはずの警官の姿がそこにはなぜか見当たらない。
懐中電灯の明かりも、いつの間にか消えてしまっている。
しかし、それでも誰かの手が彼女の右手をつかんでいる感触は、いまだにしっかりと感じられるのである。
彼女が恐る恐るという感じで辺りを見回すと、彼女を握っている手は、トンネルの壁一面からびっしりとはえた無数の手のうちの一本であった。
しかし、これまでに彼女はそこで何もおかしなものを見たことはなかったので、トンネルのことは特に気にしないでいた。
ところが、いざトンネルに差し掛かってみると、この日は様子がおかしい。
何かのトラブルがあったのか、トンネル内の電灯が全て消えていたのである。
こんな時間に、明かり一つ見えないトンネルを抜けるというのは、なんとも心細いものだ。彼女がトンネルの入り口で躊躇していると、後ろから「どうしました?」と誰かが声をかけてきた。
振り返ると、そこには若い警官が立っている。彼女が事情を説明すると、警官はそれならば自分が手を引いて案内するので、一緒に向こう側まで行きましょうと申し出てきた。
警官の持つ懐中電灯の細い明かりに照らされたトンネルの中は、いつもとは異なりかなり不気味な表情を見せている。彼女は何か変なものを見てしまうことを恐れて目をつぶると、警官に手を引かれるまま暗闇の中を歩いていった。
「つきましたよ」
やがてそんな声が聞こえ、彼女は恐る恐る目を開いた。
彼女の立つ少し先には、確かにトンネルの向かい側が見える。ところが、彼女の前を歩いていたはずの警官の姿がそこにはなぜか見当たらない。
懐中電灯の明かりも、いつの間にか消えてしまっている。
しかし、それでも誰かの手が彼女の右手をつかんでいる感触は、いまだにしっかりと感じられるのである。
彼女が恐る恐るという感じで辺りを見回すと、彼女を握っている手は、トンネルの壁一面からびっしりとはえた無数の手のうちの一本であった。