2008年02月08日
婚約者
ある男が、年下の婚約者を両親に紹介するために実家へ帰った。
婚約者は、容姿、家柄、学歴等申し分の無い女性であったが、どうも両親の態度が芳しくない。
結婚に反対する訳ではないのだが、婚約者を見る目が何となく暗い。
男は、夜になって母親と二人きりになった際に、何か気になる事でもあるのか?と聞いてみた。
母親はそれには答えず、箪笥の引き出しから1枚の写真を取りだした。
初めて見る写真だった。
「お前が生まれたときの写真だ」
産湯に浸かった赤ん坊を、産婆と父親らしき男性が覗き込んでいる。
「…ここ見てみ」
母親は赤ん坊の足元あたりの水面を指差した。
そこには、笑顔で赤ん坊の方に手を延ばす婚約者の姿が写り込んでいた。
婚約者は、容姿、家柄、学歴等申し分の無い女性であったが、どうも両親の態度が芳しくない。
結婚に反対する訳ではないのだが、婚約者を見る目が何となく暗い。
男は、夜になって母親と二人きりになった際に、何か気になる事でもあるのか?と聞いてみた。
母親はそれには答えず、箪笥の引き出しから1枚の写真を取りだした。
初めて見る写真だった。
「お前が生まれたときの写真だ」
産湯に浸かった赤ん坊を、産婆と父親らしき男性が覗き込んでいる。
「…ここ見てみ」
母親は赤ん坊の足元あたりの水面を指差した。
そこには、笑顔で赤ん坊の方に手を延ばす婚約者の姿が写り込んでいた。
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11:59
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2008年02月07日
ボーイさん
○○ホテルでの出来事。
上記のホテルの一室で熟睡していたら、夜中の三時頃にしつこく、ドアをノックする音が聞こえたそうです。
何ごとかと思い、のぞき穴を見たら若いボーイさんが立っていました。
先輩が
「何か?」
と思いドアを開けたら、ボーイはづかづかと部屋に入りこみ
「昨夜御泊まりでしたお客様の忘れ物を探しております。」
と2、3分探して部屋を出ていったそうです。
翌朝、先輩はフロントに
「夜中に失礼だ」
とクレームをつけたそうです。
フロントは少し青ざめながら
「そのボーイは帽子をかぶっておりましたか?」
と。
先輩は
「ええ、白い帽子をかぶっていました。」
と答えたそうです。
フロントは更に青ざめながら
「30年前の制服には帽子がありましたが、現在の制服には帽子はないんです」
と言ったそうです。
上記のホテルの一室で熟睡していたら、夜中の三時頃にしつこく、ドアをノックする音が聞こえたそうです。
何ごとかと思い、のぞき穴を見たら若いボーイさんが立っていました。
先輩が
「何か?」
と思いドアを開けたら、ボーイはづかづかと部屋に入りこみ
「昨夜御泊まりでしたお客様の忘れ物を探しております。」
と2、3分探して部屋を出ていったそうです。
翌朝、先輩はフロントに
「夜中に失礼だ」
とクレームをつけたそうです。
フロントは少し青ざめながら
「そのボーイは帽子をかぶっておりましたか?」
と。
先輩は
「ええ、白い帽子をかぶっていました。」
と答えたそうです。
フロントは更に青ざめながら
「30年前の制服には帽子がありましたが、現在の制服には帽子はないんです」
と言ったそうです。
2008年02月06日
無人島に漂着した3人の運命
一郎と二郎と三郎が海で遭難して無人島に漂着した。
3人は島から容易には脱出出来ないことに気付き、生きていくのに必要な物を探しに各自島を探索しに行った。 3人はそれぞれ食料になりそうな植物や狩りに使えそうな道具を持ち寄った。
その際、長男一郎は古ぼけたランプも見つけてきた。
汚いランプを拭いていると、突然ランプから煙が出てきて見る間に魔神の姿になった。
ランプの魔神は低い声でこう言った。
「お前達の願いを一人一つだけ叶えてやろう。ただし同じ願いは許さん。言ったらそいつを食う。」
一郎はとっさにこう言った。
「家に帰りたい!」
びゅ~ん!!
一郎は家まで飛んでいった。
二郎も家に帰りたかったが同じ願いは言えない。
そして少し考えてこう言った。
「家の風呂に入りたい」
びゅ~ん!!
二郎は家の風呂まで飛んでいった。
最後に残された三郎も家に帰りたかったがやっぱり同じ願いは言えない。
少し考えてこう言った。
「二人に会いたい!」
びゅ~ん!!
一郎と二郎が戻ってきた。
3人は島から容易には脱出出来ないことに気付き、生きていくのに必要な物を探しに各自島を探索しに行った。 3人はそれぞれ食料になりそうな植物や狩りに使えそうな道具を持ち寄った。
その際、長男一郎は古ぼけたランプも見つけてきた。
汚いランプを拭いていると、突然ランプから煙が出てきて見る間に魔神の姿になった。
ランプの魔神は低い声でこう言った。
「お前達の願いを一人一つだけ叶えてやろう。ただし同じ願いは許さん。言ったらそいつを食う。」
一郎はとっさにこう言った。
「家に帰りたい!」
びゅ~ん!!
一郎は家まで飛んでいった。
二郎も家に帰りたかったが同じ願いは言えない。
そして少し考えてこう言った。
「家の風呂に入りたい」
びゅ~ん!!
二郎は家の風呂まで飛んでいった。
最後に残された三郎も家に帰りたかったがやっぱり同じ願いは言えない。
少し考えてこう言った。
「二人に会いたい!」
びゅ~ん!!
一郎と二郎が戻ってきた。
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14:37
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2008年02月05日
罠
N子は映画鑑賞と読書が趣味の、平凡なOLだった。
休日になれば1人で町の映画館へ出かけ、少しブームが過ぎた映画をガラガラに空いた客席から眺める。
これが彼女にとっては至福のひとときであった。
ある日曜日、いつものように映画館へ足を運んだN子は黒のスーツに身を包む若い男に声をかけられた。
N子は警戒し後ずさりしたが、男は屈託の無い笑顔を向けて言う。
「私はこう見えても映画監督なんですよ。今、この映画館で放映されているこの作品もそうです。もし良かったら観賞した後に映画の感想を聞いてもいいですか?」
--え、ええ、結構ですよ…。
突然のことにドギマギしながらも何とかそう返事するN子。
若い男の笑顔にすっかり魅了され、顔が赤く蒸気するのを感じたN子は、そそくさと館内へと駆け込んでしまった。
その日にN子が見た映画は客の入りも3割ほどの、とても秀作と言えたものではないB級パニック映画であった。
主人公の女性が、突然、見知らぬ男に拉致され、終いには窓も何もない箱のような密室に監禁され発狂するという筋書き。
これが先程の男が監督した作品だと言う。
お世辞でもセンスが良いとは思えなかった。
けれど、そのストーリーはN子の心に不思議と焼きつく。
映画館を出たらあの男に何て告げようかと、彼女はその事ばかり考えていた。
さて、映画が終わりN子は席を立った。
外へ出ると例の若い男が、魅力的な笑顔を浮かべこちらを見ている。
「あの…」
意を決したN子が口を開こうとすると、彼は素早く自分の人差し指をN子の口に軽く当てて、言った。
「この近くに私の事務所があるんです。アンケートを兼ねた感想を、そちらでお聞かせ頂いても宜しいですか?この作品は私の処女作なので、詳しく、厳しく、評価して貰いたいんです。お時間は取らせません。すぐに済みます。それに、私の作品を観賞して頂いた、その事に対して、ちょっとした謝礼の記念品もお渡ししています。」
おっとりしているように見えても警戒心は人一倍強い方のN子だったのだが、若い男の巧みな言葉と甘いマスクに、彼女は「はい」と快諾したのであった。
若い男は、映画の制作秘話や苦労話をおもしろ可笑しく聞かせてくれた。
そうやってN子と談笑しながら、映画館から少し離れた大通りに面する大きなビルの中へと案内する。
ビルの中でも人の行き来が多かったこと、また、監督だと名乗る若い男の人柄が物腰柔らかで誠実であること、今や警戒心など微塵もなくN子は安心しきっていた。
エレベーターが10階へ昇るその中で、若い男が照れくさそうにN子に聞いた。
「あ…さっき観てもらった僕のあの映画、どうでしたか?街中で感想を言われると恥ずかしいもんだから、先程は敢えて遮りましたが」
N子は
「ストレートな題材でシンプルな点が良かったですよ、ただ」
と答え、
「ただ、分からないのは、監督として私達に何を伝えたかったのですか?」
チン!
「…着きましたよ、ここです」
エレベーターの扉が開く。若い男はN子の質問には答えなかった。
相変わらず優しい笑顔をたたえたまま、彼女をあるドアの前まで連れてきた。
ドアの表札には、この男の映画制作事務所の名が刻まれている。
男は鍵を開けると扉を開き、
「さぁどうぞ中へ」
、手でN子を室内へと導いた。
N子がソロソロと中へ入る。
室内は整然とし、文字通り「事務所」といった感じで、全く殺風景であった。
彼女が振り返ると、若い男は自分の体でドアが閉まらぬように支えながら、戸口で携帯電話を手にして何やら指を動かしている。
「失礼、仕事の件で連絡があったようです、ちょっとお待ち頂けますか」
男は携帯から顔も上げずにN子へそう告げた。
N子は
「はい」
と頷くと、改めて室内を見回す。
書類棚や事務机、キャビネット置かれたその部屋には、不思議な事にキッチンが無かった。それどころか、トイレも見当たらない。
変な間取りのマンションだ、N子は眉をひそめた。
それに変に室内が薄暗い。昼間なのに、電気をつけていてこの明るさ…。
急いで、カーテンの閉められた窓辺へ近寄った。
N子がカーテンを開けると、そこは、壁。
ドアに立っている男を振り返った、彼は、あの優しい笑顔を浮かべながら、玄関の外へ出て、パタンと静かにドアを閉めた。
N子は手にしていた鞄を床にストンと落とす。
玄関ドアの内側には、ドアノブがついていなかった。
休日になれば1人で町の映画館へ出かけ、少しブームが過ぎた映画をガラガラに空いた客席から眺める。
これが彼女にとっては至福のひとときであった。
ある日曜日、いつものように映画館へ足を運んだN子は黒のスーツに身を包む若い男に声をかけられた。
N子は警戒し後ずさりしたが、男は屈託の無い笑顔を向けて言う。
「私はこう見えても映画監督なんですよ。今、この映画館で放映されているこの作品もそうです。もし良かったら観賞した後に映画の感想を聞いてもいいですか?」
--え、ええ、結構ですよ…。
突然のことにドギマギしながらも何とかそう返事するN子。
若い男の笑顔にすっかり魅了され、顔が赤く蒸気するのを感じたN子は、そそくさと館内へと駆け込んでしまった。
その日にN子が見た映画は客の入りも3割ほどの、とても秀作と言えたものではないB級パニック映画であった。
主人公の女性が、突然、見知らぬ男に拉致され、終いには窓も何もない箱のような密室に監禁され発狂するという筋書き。
これが先程の男が監督した作品だと言う。
お世辞でもセンスが良いとは思えなかった。
けれど、そのストーリーはN子の心に不思議と焼きつく。
映画館を出たらあの男に何て告げようかと、彼女はその事ばかり考えていた。
さて、映画が終わりN子は席を立った。
外へ出ると例の若い男が、魅力的な笑顔を浮かべこちらを見ている。
「あの…」
意を決したN子が口を開こうとすると、彼は素早く自分の人差し指をN子の口に軽く当てて、言った。
「この近くに私の事務所があるんです。アンケートを兼ねた感想を、そちらでお聞かせ頂いても宜しいですか?この作品は私の処女作なので、詳しく、厳しく、評価して貰いたいんです。お時間は取らせません。すぐに済みます。それに、私の作品を観賞して頂いた、その事に対して、ちょっとした謝礼の記念品もお渡ししています。」
おっとりしているように見えても警戒心は人一倍強い方のN子だったのだが、若い男の巧みな言葉と甘いマスクに、彼女は「はい」と快諾したのであった。
若い男は、映画の制作秘話や苦労話をおもしろ可笑しく聞かせてくれた。
そうやってN子と談笑しながら、映画館から少し離れた大通りに面する大きなビルの中へと案内する。
ビルの中でも人の行き来が多かったこと、また、監督だと名乗る若い男の人柄が物腰柔らかで誠実であること、今や警戒心など微塵もなくN子は安心しきっていた。
エレベーターが10階へ昇るその中で、若い男が照れくさそうにN子に聞いた。
「あ…さっき観てもらった僕のあの映画、どうでしたか?街中で感想を言われると恥ずかしいもんだから、先程は敢えて遮りましたが」
N子は
「ストレートな題材でシンプルな点が良かったですよ、ただ」
と答え、
「ただ、分からないのは、監督として私達に何を伝えたかったのですか?」
チン!
「…着きましたよ、ここです」
エレベーターの扉が開く。若い男はN子の質問には答えなかった。
相変わらず優しい笑顔をたたえたまま、彼女をあるドアの前まで連れてきた。
ドアの表札には、この男の映画制作事務所の名が刻まれている。
男は鍵を開けると扉を開き、
「さぁどうぞ中へ」
、手でN子を室内へと導いた。
N子がソロソロと中へ入る。
室内は整然とし、文字通り「事務所」といった感じで、全く殺風景であった。
彼女が振り返ると、若い男は自分の体でドアが閉まらぬように支えながら、戸口で携帯電話を手にして何やら指を動かしている。
「失礼、仕事の件で連絡があったようです、ちょっとお待ち頂けますか」
男は携帯から顔も上げずにN子へそう告げた。
N子は
「はい」
と頷くと、改めて室内を見回す。
書類棚や事務机、キャビネット置かれたその部屋には、不思議な事にキッチンが無かった。それどころか、トイレも見当たらない。
変な間取りのマンションだ、N子は眉をひそめた。
それに変に室内が薄暗い。昼間なのに、電気をつけていてこの明るさ…。
急いで、カーテンの閉められた窓辺へ近寄った。
N子がカーテンを開けると、そこは、壁。
ドアに立っている男を振り返った、彼は、あの優しい笑顔を浮かべながら、玄関の外へ出て、パタンと静かにドアを閉めた。
N子は手にしていた鞄を床にストンと落とす。
玄関ドアの内側には、ドアノブがついていなかった。
2008年02月04日
机の穴
修学旅行の班を決める時、Tさんは一人あぶれてしまった。
先生 「は~いみんな注目!、どこかTさん入れてやって下さい~」
クラスのみんな 「え~~」
そう、すでに仲の良い人同士で班はできあがってしまい、Tさんの入る余地は無かったのだ。
教壇の前で一人黙ってうつむきながら立ち尽くすTさん。一番前の席だった私はTさんの方を
そ~と見てみた。ぽたぽたと大粒の涙を落としている。更に追い討ちをかけるように
先生 「は~い、決まらないと旅行行けなくなりま~す」
急速にクラスの雰囲気が悪くなってきた。
「Tのせいで帰れないし~」
「ほんと使えない奴~」
もうTさんは今にも倒れそうなくらい真っ青な顔だ。心なしか震えてもいるようだ。
そんな状況が30分ほど続いた。
先生 「今日はここまでにしましょう。みんなTさんの班を考えておくように」
先生が教室から出た後、みんなはTさんに詰め寄った。
「お前なんなんだよ」
「お前がもたもたしてるからみんな迷惑してんだよ!」
次々に罵声が飛ぶ。じっとさっきから直立不同の同じ姿勢でうつむいているTさん。
「もういいや帰ろ!」
みんなが帰り始めてもまだTさんは立ったままだ。私も帰ろうとした時、小さな小さな声が
聞こえてきた。
「殺してやる 殺してやる」次の日、Tさんは学校を休んだ。その次の日も又その次の日も。
結局Tさんがいないまま、修学旅行当日になってしまった。
皆はしゃいでいてTさんの事など気にも留めていない。
みんながバスに乗りこんだ後、私は教室に忘れ物をした事に気がついた。
「先生、教室に戻って取ってきていいですか?」
「遅いと置いて行っちゃうよ、そしたらお前だけ走って来い」
定番のつまらない突っ込みにもみんなテンション高くて車内で笑い声が響き渡る。
みんな本当にTさんの事は忘れているようだ。
急いで戻り教室に入ろうとした時、教室内に人影があるのに気づいた。
「カーン、カーン」という変な音も聞こえる。
私は教室に入ることは出来なかった。そこにはパジャマ姿で髪を振り乱したTさんが、一人一人の机にワラ人形を打ちつけていたからだ。職員室に向かって全力で走った。違う学年の先生しか居なかったがかまわず、
「あっ、あっあの、教室でTさんがっ、」
うまく説明できない。
「どうした、ん、6年は修学旅行だろ」
「Tさんが。」
それしか言えない。私の様子がおかしいのを察してくれたある先生が来てくれる事になった。
先生と一緒に教室へ向かう私。だんだんとあの「カーン、カーン」という音が聞こえてくる。
先生 「何の音だ?」
私 「・ ・ ・」
教室に着いた。ガラッと戸を開け、
先生 「誰だ残ってるのは!早くバスに乗れ!」
異様な光景が広がった。
教室にある全ての机にワラ人形が打ちつけてある。先生の机にも。
ずらりと奇麗に並んだワラ人形は誰も居ないカーテンを閉めた薄暗い教室との相乗効果で
ただ恐怖としか表現できない。
Tさんは私の机の前に立っていた。パジャマ姿で髪を振り乱し右手にハンマーを持って。
脇には荷物が散乱している。
私の机の上には忘れものの荷物があったので最後にワラ人形を打ちつけたらしい。
先生 「何してるんだ!!」
Tさんはこちらを向き、にこっと微笑みかけた。そしてフッと消えた。
先生と私の見てる目の前で。
先生 私 「・ ・ ・」
「どうしたどうした、バスが待ってるんだぞ!」
その時、担任の先生がようやく来た。そして教室を見て固まってしまった・・・。それから6年の先生が集まり、ワラ人形を回収していく作業をぼーと眺める私。
しばらくして先生達がひそひそ話を始め、私をちらりと見た。担任の先生が
私に歩み寄り、
「大丈夫。もういいからバスに乗って。この事は修学旅行が終わるまで黙ってて」
1時間遅れでバスは出発し、修学旅行自体はそれで何事も無く終わった。
私は並んだワラ人形とTさんの不気味な微笑みが頭から離れず、少しも旅行を楽しめなかった。修学旅行が終わり登校すると、Tさんの机の上に花瓶が置いてあった。
「Tさん死んだんだって」
「マジで!」
「TVみたいに本当に花机に飾るんだ、怖え~」
Tさんは修学旅行当日の朝、自分の部屋で首を吊ったそうだ。
教室はどよめいていた。 が、私はじゃああの時のTさんは一体?などと考えていた。
先生が、
「はい、みんな席に着く!」
席に着いた。これから体育館で全校集会があるとか、誰かに何か聞かれても知らないと
答えなさいとか、そんな話を聞いていた。突然、誰かが
「なんか机に穴が空いてるんだけど」
と言い出した。直ぐに教室中に広まり、俺も、私もと大騒ぎになった。
私はなぜ穴が空いているのか知っていたので黙っていた。
先生 「旅行中に教室でちょっとした工事があってその時の穴です。使いづらい人は
換えるので手を上げて」
何人かが手を上げたが、交換には何日かかかるらしい。
私はなにか現実ではなく夢を見ているような気分でいた。そう簡単に人が死んだり、
ワラ人形が出てきたりするわけが無い。・ ・ ・」
何かが聞こえたような気がした。
耳に全神経を集中して探す。誰かの声のようだ。
どこから?直ぐ近くだ。
ハッとした。私の視線は机の穴にくぎ付けとなった。
恐る恐る耳を穴に近づける。「殺してやる 殺してやる」と小さな小さな声が穴の中から聞こえてきた。
先生 「は~いみんな注目!、どこかTさん入れてやって下さい~」
クラスのみんな 「え~~」
そう、すでに仲の良い人同士で班はできあがってしまい、Tさんの入る余地は無かったのだ。
教壇の前で一人黙ってうつむきながら立ち尽くすTさん。一番前の席だった私はTさんの方を
そ~と見てみた。ぽたぽたと大粒の涙を落としている。更に追い討ちをかけるように
先生 「は~い、決まらないと旅行行けなくなりま~す」
急速にクラスの雰囲気が悪くなってきた。
「Tのせいで帰れないし~」
「ほんと使えない奴~」
もうTさんは今にも倒れそうなくらい真っ青な顔だ。心なしか震えてもいるようだ。
そんな状況が30分ほど続いた。
先生 「今日はここまでにしましょう。みんなTさんの班を考えておくように」
先生が教室から出た後、みんなはTさんに詰め寄った。
「お前なんなんだよ」
「お前がもたもたしてるからみんな迷惑してんだよ!」
次々に罵声が飛ぶ。じっとさっきから直立不同の同じ姿勢でうつむいているTさん。
「もういいや帰ろ!」
みんなが帰り始めてもまだTさんは立ったままだ。私も帰ろうとした時、小さな小さな声が
聞こえてきた。
「殺してやる 殺してやる」次の日、Tさんは学校を休んだ。その次の日も又その次の日も。
結局Tさんがいないまま、修学旅行当日になってしまった。
皆はしゃいでいてTさんの事など気にも留めていない。
みんながバスに乗りこんだ後、私は教室に忘れ物をした事に気がついた。
「先生、教室に戻って取ってきていいですか?」
「遅いと置いて行っちゃうよ、そしたらお前だけ走って来い」
定番のつまらない突っ込みにもみんなテンション高くて車内で笑い声が響き渡る。
みんな本当にTさんの事は忘れているようだ。
急いで戻り教室に入ろうとした時、教室内に人影があるのに気づいた。
「カーン、カーン」という変な音も聞こえる。
私は教室に入ることは出来なかった。そこにはパジャマ姿で髪を振り乱したTさんが、一人一人の机にワラ人形を打ちつけていたからだ。職員室に向かって全力で走った。違う学年の先生しか居なかったがかまわず、
「あっ、あっあの、教室でTさんがっ、」
うまく説明できない。
「どうした、ん、6年は修学旅行だろ」
「Tさんが。」
それしか言えない。私の様子がおかしいのを察してくれたある先生が来てくれる事になった。
先生と一緒に教室へ向かう私。だんだんとあの「カーン、カーン」という音が聞こえてくる。
先生 「何の音だ?」
私 「・ ・ ・」
教室に着いた。ガラッと戸を開け、
先生 「誰だ残ってるのは!早くバスに乗れ!」
異様な光景が広がった。
教室にある全ての机にワラ人形が打ちつけてある。先生の机にも。
ずらりと奇麗に並んだワラ人形は誰も居ないカーテンを閉めた薄暗い教室との相乗効果で
ただ恐怖としか表現できない。
Tさんは私の机の前に立っていた。パジャマ姿で髪を振り乱し右手にハンマーを持って。
脇には荷物が散乱している。
私の机の上には忘れものの荷物があったので最後にワラ人形を打ちつけたらしい。
先生 「何してるんだ!!」
Tさんはこちらを向き、にこっと微笑みかけた。そしてフッと消えた。
先生と私の見てる目の前で。
先生 私 「・ ・ ・」
「どうしたどうした、バスが待ってるんだぞ!」
その時、担任の先生がようやく来た。そして教室を見て固まってしまった・・・。それから6年の先生が集まり、ワラ人形を回収していく作業をぼーと眺める私。
しばらくして先生達がひそひそ話を始め、私をちらりと見た。担任の先生が
私に歩み寄り、
「大丈夫。もういいからバスに乗って。この事は修学旅行が終わるまで黙ってて」
1時間遅れでバスは出発し、修学旅行自体はそれで何事も無く終わった。
私は並んだワラ人形とTさんの不気味な微笑みが頭から離れず、少しも旅行を楽しめなかった。修学旅行が終わり登校すると、Tさんの机の上に花瓶が置いてあった。
「Tさん死んだんだって」
「マジで!」
「TVみたいに本当に花机に飾るんだ、怖え~」
Tさんは修学旅行当日の朝、自分の部屋で首を吊ったそうだ。
教室はどよめいていた。 が、私はじゃああの時のTさんは一体?などと考えていた。
先生が、
「はい、みんな席に着く!」
席に着いた。これから体育館で全校集会があるとか、誰かに何か聞かれても知らないと
答えなさいとか、そんな話を聞いていた。突然、誰かが
「なんか机に穴が空いてるんだけど」
と言い出した。直ぐに教室中に広まり、俺も、私もと大騒ぎになった。
私はなぜ穴が空いているのか知っていたので黙っていた。
先生 「旅行中に教室でちょっとした工事があってその時の穴です。使いづらい人は
換えるので手を上げて」
何人かが手を上げたが、交換には何日かかかるらしい。
私はなにか現実ではなく夢を見ているような気分でいた。そう簡単に人が死んだり、
ワラ人形が出てきたりするわけが無い。・ ・ ・」
何かが聞こえたような気がした。
耳に全神経を集中して探す。誰かの声のようだ。
どこから?直ぐ近くだ。
ハッとした。私の視線は机の穴にくぎ付けとなった。
恐る恐る耳を穴に近づける。「殺してやる 殺してやる」と小さな小さな声が穴の中から聞こえてきた。
2008年02月03日
盗んだ金
男がいた。生計を立てるため、ひったくりをしていた。
その手口は、夜中に自転車に乗りながら、ひったくりをし、ある程度逃げた後、鞄を川に投げ込んで、時期を見て鞄を引き上げ、濡れた金(札)は、家の壁に貼り付け乾かす、というものだった。
そんな事を何度も繰り返していた。
ある時、老人を襲った。いつものように、ひったくりをして逃げた。
後ろで自動車の急ブレーキの音が聞こえたが、なりふり構わず逃げ、鞄を川へ投げ込んだ。
翌日、男はテレビで老人が事故で死亡したニュースを見た。
同じ時間、同じ場所、間違い無いあの老人だ。
だが事故と見なされ、男が捕まる事はなかった。
これを機に、二度と強盗をしなくなった。
最後に盗んだ鞄の中には、数百万の金が入っていた。
幾度も札を壁に貼り、乾かしてはまた札を張る作業を繰り返した。
何度も、何度も…
数年後、男は働いていた。給料は安かったが、それなりの生活もできた。
結婚もできた。あの事件を思い出す事も少なくなっていた。
子供が生まれ、そしてまた数年後…
子供は4歳になっていた。事件を思い出す事は無くなっていた。
子供が奇妙な遊びをするようになった。
新聞紙を切っては、水に濡らし、壁に貼る。乾いたら剥がす。
また濡らしておいた新聞紙を貼る。そして剥がす…
また貼って、剥がす。また貼って、剥がす…
男は思い当たる。自分の過去、あの事件。
もちろん妻には言っていないし、ましてや子供が知るはずもない。
だが子供は毎日、奇妙な遊びを繰り返す。
男は日増しに恐怖心が募る。
男は耐え切れなくなり、ついに子供に聞いてみた。
「どうして、そんな遊びをすんだ?」
子供は不思議そうに聞き返す。
「え?だってパパもやっていたんでしょ?」
その手口は、夜中に自転車に乗りながら、ひったくりをし、ある程度逃げた後、鞄を川に投げ込んで、時期を見て鞄を引き上げ、濡れた金(札)は、家の壁に貼り付け乾かす、というものだった。
そんな事を何度も繰り返していた。
ある時、老人を襲った。いつものように、ひったくりをして逃げた。
後ろで自動車の急ブレーキの音が聞こえたが、なりふり構わず逃げ、鞄を川へ投げ込んだ。
翌日、男はテレビで老人が事故で死亡したニュースを見た。
同じ時間、同じ場所、間違い無いあの老人だ。
だが事故と見なされ、男が捕まる事はなかった。
これを機に、二度と強盗をしなくなった。
最後に盗んだ鞄の中には、数百万の金が入っていた。
幾度も札を壁に貼り、乾かしてはまた札を張る作業を繰り返した。
何度も、何度も…
数年後、男は働いていた。給料は安かったが、それなりの生活もできた。
結婚もできた。あの事件を思い出す事も少なくなっていた。
子供が生まれ、そしてまた数年後…
子供は4歳になっていた。事件を思い出す事は無くなっていた。
子供が奇妙な遊びをするようになった。
新聞紙を切っては、水に濡らし、壁に貼る。乾いたら剥がす。
また濡らしておいた新聞紙を貼る。そして剥がす…
また貼って、剥がす。また貼って、剥がす…
男は思い当たる。自分の過去、あの事件。
もちろん妻には言っていないし、ましてや子供が知るはずもない。
だが子供は毎日、奇妙な遊びを繰り返す。
男は日増しに恐怖心が募る。
男は耐え切れなくなり、ついに子供に聞いてみた。
「どうして、そんな遊びをすんだ?」
子供は不思議そうに聞き返す。
「え?だってパパもやっていたんでしょ?」
2008年02月02日
占い
ある夜、薄暗い道をほろ酔い加減の男が歩いていた。
男が歩きながらふと横を見ると、50がらみの男が椅子にすわって本を読んでいた。
男の前にある机には「占」とかかれた紙が貼られ、水晶玉が置かれている。男は占い師のようだ。
男は好奇心から占ってもらうことにした。
男は机の前の椅子に腰掛け、言った。
「うちの弟のことを占ってほしいんだけど」
占い師は頷き、弟の名前と年齢を聞いて来た。男は自分の名前と、5年後の年齢を答えた。
男に弟はいない。少しからかうつもりだったのだ。
「○○××さん、28才でよろしかったですよね?」
占い師は確認し、水晶玉に手をかざして占い始めた。が、途中で顔色が変わり、周りに積み上げられている本を片っ端から調べ始めた。
ひととおり調べてしまうと占い師は汗をふきふき男に尋ねた。
「失礼ですけど、○○××さんはご健在ですよね?」
「元気ですよ、失礼な」
そういうと占い師は、
「弟さんに、体を大事にするように言って下さいね」
と何回も繰り返し始めた。
「どうしてそんな事を…」
男はたずねた。
「貴方の弟さんね、占いの結果だとね、5年前の今日に亡くなってるはずなんですよ」
男が歩きながらふと横を見ると、50がらみの男が椅子にすわって本を読んでいた。
男の前にある机には「占」とかかれた紙が貼られ、水晶玉が置かれている。男は占い師のようだ。
男は好奇心から占ってもらうことにした。
男は机の前の椅子に腰掛け、言った。
「うちの弟のことを占ってほしいんだけど」
占い師は頷き、弟の名前と年齢を聞いて来た。男は自分の名前と、5年後の年齢を答えた。
男に弟はいない。少しからかうつもりだったのだ。
「○○××さん、28才でよろしかったですよね?」
占い師は確認し、水晶玉に手をかざして占い始めた。が、途中で顔色が変わり、周りに積み上げられている本を片っ端から調べ始めた。
ひととおり調べてしまうと占い師は汗をふきふき男に尋ねた。
「失礼ですけど、○○××さんはご健在ですよね?」
「元気ですよ、失礼な」
そういうと占い師は、
「弟さんに、体を大事にするように言って下さいね」
と何回も繰り返し始めた。
「どうしてそんな事を…」
男はたずねた。
「貴方の弟さんね、占いの結果だとね、5年前の今日に亡くなってるはずなんですよ」