チェンニーナ事件
イタリアの小さな町チェンニーナの農場に住むローザ・ロッティ・ネイ・ダイネリ(40)は、教会へ行くために朝早く家を出た。
とっておきの靴を汚したくなかった彼女は裸足になって小道を歩き、片手に靴とストッキング、もう片手には祭壇に供えるカーネーションの花束を持っていた。
彼女は林の間を抜ける道で、前方の糸杉の根元に高さ2mを超す紡錘形の物体を発見して近づいた。
物体はなめし革を張ったようなツルツルの表面で、最もふくらんだ部分の直径は1mばかりあった。そこに丸い窓が二つと小さなドアがあり、開いたドアからは内部にある背中合わせになった小さな座席が見て取れた。
彼女がもっと近づこうとしたところ、突然物体の背後から身長1mばかりの小人が二人現れた。彼らは小さなボタンのついた灰色の服を着、腰までのマント、頭にはヘルメットをかぶっていた。顔つきや体つきは普通の人間と変わりがなかった。
二人は満面の笑みを浮かべて彼女に近寄ると、身振り手振りを交えて親しげに話しかけて来た。しかし話す内容は彼女に理解ができなかった。発音は中国語に似ていたという。
そのうちに年長と思われる方の小人が彼女の手からカーネーションの花束とストッキングの片方を奪い取った。彼女が驚いて立ちすくんでいると、小人はそれを物体のドアの中に放り込むと、今度はもう一人の小人と一緒に中から茶色の丸い包みを二つ取り出した。
それを機に彼女は小人達に背を向け、町の方に駆け出した。走っているうちに恐怖がつのってきて、町に着いた時は恐怖と疲労でしばらくは口もきけなかった。
彼女の報告を聞いて憲兵隊が現場に駆けつけたが、物体も小人も姿を消していた。しかし物体のあった場所には大きな穴があいていた。
その後、彼女が物体を発見した午前6時半頃、同じ林のあたりから飛び去る葉巻型の光る物体を見たという石工の証言を得た。他にも怪物体の目撃者はおり、信頼性の高い事件と言われている。
ニコニコした怪人がわりと友好的に話しかけてきた上、どうでもいいような物を奪って去って行くという、まことに荒唐無稽な事件である。寝ぼけて幻でも見たんじゃないかと一笑に付してしまいそうだが、現場の穴、複数の人のUFOの目撃証言があるため、そうとばかりも言っていられない。もっともその証言が誤認や嘘でない確かなものであればだが。
現場の穴というのはロケットを噴射したような穴なのだろうか。大きな穴というのだから、言葉からはUFOの着陸脚痕とは違うようにイメージされる。
イラストから想像するに、怪物体の中に小人達が入ったとするとかなり中は狭いんじゃないだろうか。実はUFOはまた別にあり、あれは何かの作業機械なのかもしれない。もしあれがUFOなんだとすると、ずいぶん窮屈な姿勢で乗っていなければならなさそうだ。
関連記事