スイカ割り

ドケット

2008年04月07日 12:27

夏休み。友人のAは、町内の子供会の役員をやっていた。

夏のイベントは、海水浴+バーベキュー。小2の長男を連れて参加した。

彼はバーベキュー係。楽しい昼飯も無事に終わり、彼の役目も終了。ビールを片手に寝転がっていた。

横では、丁度スイカ割が始まって、自分の子供もそれに参加している所。

ウトウトしていた彼の耳に、子供の声援が聞こえてくる。「もっと右!」「違う違う!」

大半の子供が失敗する中、最初の子供が成功した。「やった!」「ギャー!」

目をつぶっている彼の耳に、にぎやかな声。しばらくすると、二個目。「いいぞ!」「ギャー!」

元気である。そして三個目。「そこだ!」「ギャー!」・・・・え、ギャー?

・・・それは声援というより、女性の悲鳴に近い声。

それも子供の声には思えない。

彼は気になって目を開けた。

そこには楽しそうにしている子供がいるだけ。悲鳴を上げそうな女性の姿は見えない。

不審に思っている所に、最後の四個目のスイカに目がいった。丁度狙いを定めた子供が割る所。

地面に置かれているスイカ。・・・・いや、スイカじゃない!少なくとも彼には、女性の生首に見えた。

子供の棒が振り下ろされる。それは確実に生首にヒットした。・・ぐしゃ!・・「ギャー!」

スイカが、いや首が、顔を歪ませ、悲鳴を発した。つぶれ、二つに割れ、中から赤い液体がほとばしる。

彼は立ち上がり子供達の方へ。『なんて事をするんだ!』そう叫ぼうと、もう一度スイカを見ると、
それはどこも不審な所のない、ただのスイカになっていた。

彼は疲れているのだと、自分に納得させて、ふたたび横になった。そして、子供会も無事に終わった。

そして、それから数日が過ぎた。彼は、あの日の事が気になって、ちょっと調べてみた。

すると、数年前、その海岸で女性が撲殺されていた事がわかった。

致命傷は、頭蓋骨陥没だったらしい。

関連記事