盗んだ金

ドケット

2008年02月03日 14:57

男がいた。生計を立てるため、ひったくりをしていた。

その手口は、夜中に自転車に乗りながら、ひったくりをし、ある程度逃げた後、鞄を川に投げ込んで、時期を見て鞄を引き上げ、濡れた金(札)は、家の壁に貼り付け乾かす、というものだった。

そんな事を何度も繰り返していた。

ある時、老人を襲った。いつものように、ひったくりをして逃げた。

後ろで自動車の急ブレーキの音が聞こえたが、なりふり構わず逃げ、鞄を川へ投げ込んだ。

翌日、男はテレビで老人が事故で死亡したニュースを見た。

同じ時間、同じ場所、間違い無いあの老人だ。

だが事故と見なされ、男が捕まる事はなかった。

これを機に、二度と強盗をしなくなった。

最後に盗んだ鞄の中には、数百万の金が入っていた。

幾度も札を壁に貼り、乾かしてはまた札を張る作業を繰り返した。

何度も、何度も…

数年後、男は働いていた。給料は安かったが、それなりの生活もできた。

結婚もできた。あの事件を思い出す事も少なくなっていた。

子供が生まれ、そしてまた数年後…

子供は4歳になっていた。事件を思い出す事は無くなっていた。

子供が奇妙な遊びをするようになった。

新聞紙を切っては、水に濡らし、壁に貼る。乾いたら剥がす。

また濡らしておいた新聞紙を貼る。そして剥がす…

また貼って、剥がす。また貼って、剥がす…

男は思い当たる。自分の過去、あの事件。

もちろん妻には言っていないし、ましてや子供が知るはずもない。

だが子供は毎日、奇妙な遊びを繰り返す。

男は日増しに恐怖心が募る。

男は耐え切れなくなり、ついに子供に聞いてみた。

「どうして、そんな遊びをすんだ?」

子供は不思議そうに聞き返す。





























「え?だってパパもやっていたんでしょ?」

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